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2011.12.15 iPS細胞から歯の象牙芽細胞への分化誘導技術の開発に成功

iPS細胞から歯の象牙芽細胞への分化誘導技術の開発について

歯の表面はエナメル質でその内側は象牙質で作られており,エナメル質はエナメル芽細胞によって象牙質は象牙芽細胞で作られる。本発明は iPS 細胞から象牙芽細胞の特性をもった細胞に分化誘導する技術を世界で始めて開発した。
象牙芽細胞の祖先は外胚葉に由来する神経堤細胞であり,この細胞は歯胚の上皮細胞(エナメル質を作るもとの細胞)とふれあうことで歯胚の間葉細胞(歯を作る結合組織側の細胞)になり,その後象牙芽細胞となることが知られている。我々の発明した方法はまずiPS細胞を神経堤細胞に分化させ,その後、この神経堤細胞を歯胚上皮細胞と組み合わせて共培養することや、歯胚上皮細胞の培養上清を培地に加えたりすることでこの細胞が象牙芽細胞を含む歯原性間葉へと分化すること、また誘導した神経堤細胞の中からより象牙芽細胞へ分化する能力が強い細胞を見いだして,効率的にiPS細胞から象牙芽細胞へ分化誘導する方法を確立した。
iPS細胞から歯原性細胞への分化誘導
象牙芽細胞が生まれる過程で上皮細胞との非常に複雑な分化調節機構が働いているため,iPS細胞を象牙芽細胞へと分化させることは非常に困難であった。本発明は、段階的にiPS細胞を分化させることによってこの問題を克服し、象牙芽細胞を効率よく獲得することを可能にした。 将来的には,歯の形成に関わる上皮細胞もiPS細胞から作ることが可能になれば,iPS細胞を使って歯を再生させることも可能になるだろう。また,遺伝的に歯ができない患者様の研究モデルも作ることができ,今後の治療法開発にも生かせることができる。 
この研究は東北大学歯学研究科小児発達歯科学分野福本敏教授との共同研究で,Stem Cells & Developmentのon line版に発表されました。

岩手医科大学 統合基礎講座 
解剖学講座 発生生物・再生医学分野
教授 原田 英光
研究員 大津 圭史
電話:019-651-5111(内線5880、5881)

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